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コラム

外国人労働者を解雇する場合の特徴について

日本国政府は、少子化等を原因とする労働力不足の対策として、特定技能制度の新設(2018年12月法改正による)をはじめとした外国人材の受入れ拡大に舵を切っています。
また、それ以前2012年から2020年現在に足るまで、外国人労働者の数は増加の一途を辿っており、日本の様々な職場で外国人の方を見かけるようになりました。
派遣会社・人材紹介会社の中には外国人材を中心的に扱うところも出てきています。
そのため、日本人同様、能力不足や問題行為などから、外国人労働者について解雇・雇止めを検討する事業主も増えてきたのではないでしょうか。

本コラムでは、そういった事業主の方のため、外国人労働者の解雇・雇止めについて、日本人労働者と比べてどういった特徴があるかについて解説をいたします。

目次

  1. 外国人でも解雇・雇止めの基準は変わらない
  2. 就労資格がない外国人に対する解雇の可否
  3. 就労資格に制限がある場合の解雇への影響
  4. 終わりに

1.外国人でも解雇・雇止めの基準は変わらない(大前提)

「労務を提供すべき地」(一般的には雇用契約等で定められた勤務地がこれに当たります)が日本である場合、雇用契約等であらかじめ特別な取り決めをしていない限り、解雇・雇止めの争いには日本の法律が適用されます(法の適用に関する通則法12条3項)。
仮に雇用契約等で解雇に関する紛争を日本以外に法律により争うことを合意していたとしても、労働者側が異議を述べた場合、無効になる可能性があります(同法12条1項、2項)

そのため、外国人労働者であっても、日本を勤務地としているのであれば、日本人と同様に、日本の法律が定める基準によって解雇・雇止めの有効・無効が判断されることになります。
すなわち、
・解雇の場合は、①客観的に合理的な理由 と ②解雇が社会通念上相当であること が要求されます(労働契約法16条)。
・有期雇用の更新を申し込まれた場合、a.有期雇用が過去に反復して更新されており、更新をしないことが無期雇用の解雇と同視できる場合 b.有期雇用が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認められる場合、更新拒絶について、①客観的に合理的な理由 と ②拒絶が社会通念上相当であることが要求されます(労働契約法19条)。

2.就労資格がない外国人に対する解雇の可否

一般的に、使用者側が就労資格がないことを理由に外国人を解雇することは可能(有効)であるとされています。
就労資格のない外国人であることを認識しながら就労を行わせることは不法就労助長罪に当たるものといえ、使用者側は犯罪に当たることを回避するためにも、当該外国人を解雇する必要があるからです。
この点について、使用者側が不法就労であることを知りながら雇用し、就労させた場合には、解雇を主張すること信義則上認められないとする見解もあります。

しかし、その見解をとる場合でも、適法に復職できる可能性がないため、復職を求める訴え(労働契約上の地位確認請求)を提起したとしても、訴えの利益がないものとして却下され、結局は復職を実現することはできないとされています。

なお、解雇は雇用契約を終了させる行為であり、過去に遡って雇用がなかったことにさせるものではないため、不法就労であるからといって使用者側が外国人から提供を受けた労働の対価である給料の支払を免れることにはならない点はご注意ください。

3.就労資格に制限がある場合の解雇への影響

就労資格を有する外国人労働者の場合、外国人であることが解雇の可否に直接影響を与えることは考え難く、日本人同様に、解雇について客観的に合理的な理由と解雇を行うことの相当性が要求されます。

もっとも、技能実習のような在留資格に基づいて採用されている外国人労働者の場合、有期雇用で採用されていることが通常です。
そして、有期雇用期間中の解雇は、「やむを得ない事由」が要求され、無期雇用の解雇よりもハードルが高くなっており、解雇が可能となるケースは極めて限定されるものと考えられます。

また、当該外国人労働者が就労系の在留資格に基づいて在留・就労している場合、当該在留資格に係る活動の範囲内の業務でしか就労させることができないため、配置転換が大きく制限されます。
そうすると、例えば他の部署に人員不足があったり、当該外国人労働者が他の部署でより能力を発揮できる余地がある場合でも、在留資格の内容からみて異動後に就かせたい業務を行わせることができない限りは、このような事情は解雇の判断に大きく影響しない可能性があります。

4.終わりに

以上のとおり、労働者が外国人であるからと言って解雇・雇止めの要件が変わることはありませんが、就労内容が制限されるなどの特殊な立場が解雇・雇い止めの可否に影響を与えることがあります。
また、外国人労働者を解雇した場合、当該外国人の在留資格によっては、使用者側が入管に届出を行うなどの特別の義務・配慮が求められることがあります(入管法19条の17)。
使用者がこのような入管法上の義務や労基法を遵守しなかった場合、他の外国人労働者の更新の場面でも不利に斟酌されることがあります。

そのため、外国人労働者を採用される場合、その労務管理について不備がないように、解雇・雇止めをするときも問題とならないように、社労士・弁護士等の専門家に相談して適切に対応することをお勧めいたします。

外国人労働者が解雇された場合、在留資格(ビザ)はどうなるの?(後編)在留資格を踏まえた不当解雇の闘い方

前編のコラムでは、外国人労働者に対する解雇・雇止めが在留資格に与える影響や注意点について説明をいたしましたが、就職活動を行うのではなく元の職場に復職することを求めたい方、就職活動が功を奏さず解雇を争いたい方もいらっしゃいます。
また、懲戒解雇を受け、会社都合退職として扱われない場合は、「特定活動」への在留資格変更は難しいと考えられます。

そこで、後編のコラムでは、解雇の効力を争いたい場合に在留資格との関係で外国人がとりうる手段について、ご説明をいたします。

目次

  1. 在留資格の取得前・在留期限前の解決を目指す
  2. いったん帰国して解決時に再入国する
  3. 労働契約上の地位保全の仮処分
  4. 解雇を争う場合にどのような手段を選択すべきか

1.在留資格の取消前・在留期限前の解決を目指す

まず、在留資格の取消前、在留期限の到来前の解決を目指すことが挙げられます。
労働事件の訴訟は、訴え提起から終了するまでの期間が平均14.5か月(平成30年度の数値)と長期化する傾向にあるため、迅速な解決を目指すのであれば交渉又は労働審判を選択することが考えられます。

もっとも、交渉・労働審判のいずれも、相手方が争う姿勢を崩さない場合は解決に至ることはできません
また、労働審判については、争点が複雑であるなどの場合、裁判所の判断(労働審判)を下すことなく終了してしまい、解決が図れないことがあります(労働審判法24条)。

2.いったん帰国して解決時に再入国する

次に、外国人労働者の方にいったん帰国していただき、弁護士と連絡を取りながら争うというのも方針として考えられます。
労働審判の場合、当事者への事情の聞き取りは第一回目に集中して行われるため、第二回目以降について当該外国人労働者が出頭する必要性は小さくなります。

もっとも、この方法でも、弁護士と対面での打合せができない、尋問のために日本へ渡航する必要があるコストがかかる、永住許可の要件である日本の継続居住が中断してしまう在留資格を取得しなおす必要が生じるといったデメリットがあります。

3.労働契約上の地位保全の仮処分

最後に、訴訟を提起すること前提に、労働契約上の地位保全の仮処分を行うことが考えられます。
労働契約上の地位保全の仮処分とは、解雇により失われた労働者としての地位を、訴訟による解決まで時間がかかる可能性が高い事を考慮し、暫定的に復活させるものです。

この処分が認められるには、被保全権利の存在(解雇・雇止め紛争の場合、雇用関係の存在がこれに当たります)と保全の必要性を疎明(訴訟で必要となる「立証」よりもハードルを下げたもの)が必要とされています。
解雇時に労働者が行うことができる仮処分としては賃金支払いの仮処分もあるところ、賃金支払いの仮処分を申し立てれば労働者としての地位を暫定的に復活させる必要性は小さい(ない)として、保全の必要性が否定されることが通常です。

もっとも、外国人労働者の場合、労働契約上の地位を失うと、上記のとおり在留資格も失ってしまう危険があるため、労働契約上の地位保全の仮処分も認められることがあります(これを認めた裁判例として、東京地裁昭和62年1月26日決定:労判497号138頁があります。)

4.解雇を争う場合どのような手段を選択すべきか

以上のとおり、外国人労働者が解雇を争う場合、どのような手段をとるべきかは、事案の内容(複雑さ、長期化の見通しの有無など)、当該外国人の希望、資力等に応じてケースバイケースであると言えます。
そのため、どの手段をとることが適切かを確認するためにも、弁護士にしっかりと相談をすることをお勧めします。

外国人労働者が解雇された場合、在留資格(ビザ)はどうなるの?(前編)就職活動を行う場合の注意点

日本に適法に滞在している外国人は、基本的に、保有する在留資格にかかる活動をしていることが在留の前提となっています。
そのため、通常、在留資格に係る活動を継続して3か月以上(一部の高度専門職にあっては6か月)行わないで在留している場合、正当な理由がある場合を除き、法務大臣は在留資格を取り消すことができるものとされています(入管法22条の416号)。

また、在留期間の更新を行う場面では、在留資格該当性(本邦に滞在して予定する活動が当該在留資格に係る活動に該当するものであること)が審査されます。
そのため、就労系の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」や「技能」などの資格)で在留する外国人労働者が解雇・雇止めを受けた場合、在留資格に係る活動を継続していない、そのような活動をする余地がないとして、在留資格を取り消されたり、在留資格の更新が認められないといった不利益を受けてしまうのではないかということが懸念されます。

本コラムでは、そういった懸念に答え、解雇・雇止めをされた場合に在留資格はどうなるのか?就職活動を行うことはできるのか?と言った点について解説をいたします。

目次

  1. 会社都合退職の場合、就労意思があれば在留の継続はある程度可能
  2. 就職活動を行う場合の注意点
  3. 終わりに

1.会社都合退職の場合、就労意思があれば在留の継続はある程度可能

入管は、このような外国人労働者に関し、「雇用先の倒産・業務縮小等により、自己の都合によらない理由で解雇、雇止め又は待機を通知された場合」、以下のとおりの取り扱うことを定めています(令和3719日時点)

  • 本邦で就職活動中の者については、現に有する在留資格のまま、在留期限までの在留を認める
  • 在留期限の到来後も就職活動を継続する目的で在留を希望する場合は、期限到来前まで就職活動を行っていることが確認され、在留状況に問題ない等許可することが相当であるときは、「特定活動」の在留資格が許可される
  • 当該「特定活動」への在留資格については、在留期間の更新は認めない

すなわち、このような外国人については、就職活動を継続する場合には、在留期限までの在留を認める(取消は受けない)ものの、更新は認められず、特定活動の資格に変更したうえで数か月程度の猶予が与えられるという運用が採用されています。

2.就職活動を行う場合の注意点

就労制限がある外国人労働者は、上記2で述べた運用に従って就職活動を行う場合には次に述べるポイントに注意が必要です。

(1) 退職・採用時それぞれで入管への届出が必要

退職した場合、及び新たに雇用契約を締結する場合、当該事由発生時から14日以内にその旨の届出を行う必要があります(入管法19条の16)。
なお、保有する在留資格が高度専門職1号である場合、勤務先を変更するにあたっては留資格の変更許可申請が必要になりますのでご注意ください。

(2) 不法就労にならないように注意

外国人を採用する会社が必ずしも在留資格のことを理解しているとは限りません。
そのため、採用後に命じる業務として、現在の在留資格では資格外就労に当たるものを予定することがありえます。
資格外活動を行った場合、会社の命令であっても外国人労働者が刑事処罰される可能性があり、更新の場面でも不利に斟酌されてしまいます

(3) 就職活動中のアルバイトについて

就職活動中、生活費を捻出するためにアルバイトをしたいと考える方もいらっしゃると思います。
この場合、資格外活動許可を得ることにより1週について28時間以内であれば、当該在留資格に係る活動に該当しない仕事に就くことができます。

ただし、ここにいう28時間とは、当該外国人が行う仕事全体で28時間以内である必要があるため、例えばアルバイトを掛け持ちする場合などでは、アルバイト一つ当たり28時間以内であればよいとはならないことにご注意ください。

3.終わりに

もっとも、就職活動を行うのではなく元の職場に復職することを求めたい方、就職活動が功を奏さず解雇を争いたい方もいらっしゃいます。
また、懲戒解雇を受け、会社都合退職として扱われない場合、上記2で述べたような取扱いの対象外になってしまいます。

そこで、次回は、外国人労働者が解雇の効力を争いたい場合に在留資格との関係でとりうる手段について、ご説明をいたします。

 

コロナの経営悪化で整理解雇は仕方ない…と必ずなるわけではない。労使それぞれの注意点を解説

報道によれば、2020年は、新型コロナウイルスの流行によって解雇や完全失業者が増加し、この傾向は同年末時点でも継続しているものとされています。

使用者は会社の経営が悪化するなどして人員削減の必要性がある場合には、整理解雇によって労働者との雇用関係を解消することができ、コロナによる経営不安も整理解雇の理由にはなりえます。

もっとも、整理解雇もこのような人員削減の必要性がありさえすれば無制限に認められるものではなく、またコロナによる経営不安を理由とした整理解雇の中には、人員削減の必要性があること自体疑わしい事案も仄聞されます。

そこで、本コラムでは、コロナによる経営悪化が整理解雇のどういった要素に影響を与えるかをご説明したうえで、労働者・使用者がそれぞれが注意すべきポイントを解説いたします

目次

  1. 整理解雇の基礎知識(有効・無効を分ける要素とは)
  2. コロナウイルスの流行を理由とした整理解雇のポイント
  3. 有期雇用契約に特有のポイント
  4. 労働者・使用者の対応それぞれの注意点

1 整理解雇の基礎知識(有効・無効を分ける要素とは)

整理解雇の有効性について、裁判所は、
  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力の有無・程度(一例として、新規採用の停止や希望退職者募集等)
  3. 人選の合理性
  4. 解雇手続(労働者に説明・協議を尽くしたか)の相当性
という4要素(4要件と呼称することもあります)を考慮し、解雇権の濫用に当たらないかという観点から審査を行っており、この4つの要素の立証は基本的に使用者側が行うべきものとされています。

そして、整理解雇は通常の解雇(普通解雇)と異なって基本的に労働者側に非がないにもかかわらず、労働者に対して雇用関係の解消と言う不利益を課すものであることから、その審査は普通解雇よりもは厳しく行われる傾向にあります

このような整理解雇に関する規制は、その理由がコロナウイルスの流行という未曽有の事態を原因とする場合でも異なるものではなく、人員削減の必要性が肯定される職場が多いとは考えられるものの、他の要素の検討や、4要素の存在を裏付ける証拠の存在は有効性(不当解雇であるか否か)を左右するものといえます。

2 コロナウイルスの流行を理由とした整理解雇のポイント

(1) 助成金の受給と解雇回避の努力の関係

厚生労働省は、新型コロナウイルスの流行を受けて、雇用調整助成金について助成額、助成率を引き上げるなどの特例措置を設けています。
また、このような国の支援策とは別に、各事業者について独自の支援策を実施ている地方自治体もあるようです。

使用者側が解雇を回避する努力を講じたかは整理解雇の有効性を分ける重要な要素(4要素の2つ目)とされていますが、こういった支援制度が存在する場合には、これらの支援制度を利用してもなお解雇が必要とされる場合でないと、整理解雇の有効性が否定される可能性が高まるものと言えます。

とくに、雇用調整助成金については、従業員の雇用維持を目的として構築された制度であるため、整理解雇前に利用が検討されるべきものと考えられます。

現に、新型コロナウイルスの影響による業績悪化を理由にタクシー会社が行った整理解雇が争われた仮処分申立てに関し、雇用調整助成金が利用されていないことを理由の一つとして整理解雇を無効とした決定が下されたとの報道もあります。

したがって、事業者としては、整理解雇前にこのような行政の支援策の利用検討しておくことが肝要です。

(2) コロナであるからといって説明不足が許されるわけではない

コロナ関連の解雇の中には、使用者側がなんらの説明なく解雇を通告されたという話を耳にします。

しかし、整理解雇を行う場合、使用者側が労働者側に説明を尽くしたかどうかも重要な要素とされています。

仮に新型コロナウイルスの流行による業績悪化や解雇された従業員の担当業務の喪失が真実であったとしても、十分な説明もなくに整理解雇を行った場合は整理解雇が無効とされる可能性が高まるものと考えられます。

また、このような唐突な整理解雇は、場合によっては、使用者側が解雇を回避するための措置や誰を解雇するのかといった点について十分な検討をしていないのではないかという疑いを抱かせるものでもあり、他の要素の観点からも、整理解雇の有効性を否定する事情になりうるものと考えられます。

3 有期雇用の労働者特有のポイント

整理解雇が行われる場合、有期雇用の労働者は無期雇用の方に比べて解雇の対象にされやすい傾向にあります。

確かに、有期雇用は無期雇用に比べて雇用関係を解消されやすい立場にあることは事実ですが、場合によっては無期雇用よりも雇用関係を解消するハードルが上がったり、無期雇用と同様の保護を受けることが可能になります。

(1) 契約期間中の解雇、無期雇用の解雇よりも認められにくい

労働契約法上、有期雇用労働者の契約期間途中の解雇は、「やむを得ない事由がある場合」でないと認められないとの規制が設けられています(労働契約法17条1項)。

この規制は整理解雇にも適用され、要求される解雇理由の水準は無期雇用の解雇よりも高いものとされており、契約期間中の整理解雇は無期雇用の解雇よりもいっそう認められにくいものといえます。

(2) 契約期間が通算5年以上の労働者は無期雇用に転換を求めることが可能

同一使用者間の二つの雇用契約の通算契約期間が5年を超える場合、有期雇用労働者は雇用契約を無期雇用へ転換する権利を取得します(労働契約法18条1項)。

この無期転換権は、経営不安等を理由に退職を迫られている場合や、雇止めを予告された場合であっても、雇用契約の終了前であれば行使することができます。

そして、労働者が無期転換権を行使した場合、使用者は雇用契約を解消するには雇止めではなくて解雇を行う必要がありますが、有期雇用の雇止めよりも無期雇用の解雇の方が厳しく判断されるため、労働者としては雇用関係の解消を防ぎやすくなります。

そのため、雇止めを予告された労働者が無期転換権が取得している場合、雇用契約終了前に無期転換権を行使して、リストラ目的の雇止めに対抗することが考えられます。

4 労働者・使用者の対応それぞれの注意点

(1) 労働者側の注意点

労働者側には、解雇を宣告されたり、退職を勧奨された場合に、速やかに弁護士に相談されることをお勧めします。

ごく稀に、再就職がうまくいかなかったなどとして解雇(退職)から時間が若干経過してから、解雇を争うことができないかを弁護士に相談される方がいらっしゃいます。
しかし、解雇を受けてから争う意思を表明するまで間が長く空いてしまった場合、解雇を承認した、就労意思を失ったなどとして裁判所が解雇無効の主張を制限する可能性が生じるうえ、解雇を争ううえで役に立つ証拠(会社とのやり取りに関する書類やメールなど)が散逸してしまうこともあり得ますので、弁護士への相談は、退職を迫られたり、解雇・雇止めを予告された時からできる限り間を置かずにされた方が安全です。

また、実態は会社による整理解雇であるものの、会社側が補助金支給に影響を与えないようにするため、労働者側に退職届を書かせて提出するよう強要することがあり、労働者としても断ることができずに退職届を提出してしまうことがあります。
このような場合であっても、当時の状況によっては退職届の提出は無効であるなどとして争える可能性があるため、このような事情がある場合には特に弁護士に相談して、対応を検討された方が良いでしょう。

(2) 使用者側の注意点

上記のとおり、整理解雇は要件が厳しいところもあるため、まずは労働者に説明を尽くし、また退職金を支給するなどして、合意退職の途を探ることがリスクを避けるうえで無難と考えられます。

仮に整理解雇を行う場合は、雇用調整助成金を含めて、公的な支援制度をできる限り利用して、解雇を避ける努力を講じることが重要です。

また、経営不安(人員削減の必要性)や解雇回避措置を講じている場合であっても、整理解雇を拙速に行ってしまうことで解雇の有効性が否定されることもありうるので説明を尽くす必要があります。
このような説明や解雇回避措置の塩梅については個別具体的な検討が必要であるため、整理解雇を検討されている場合、特に複数名の労働者について検討されている場合には、事前に弁護士へ相談されることをお勧めいたします。

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【労働者側:労働問題】

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痴漢でも解雇することはできない/されないのか? 痴漢を理由とした解雇の裁判例について解説

性犯罪に関する裁判の行方や性犯罪の前科を持つ者に対する扱い関するニュースが話題になることが多くなっています。
その話題の中で東京メトロ社員の諭旨解雇が無効と判断された2015年の判決(平成27年12月25日 労働判例1133号5頁に掲載)に関するニュースが言及され、この判決をもって日本では痴漢をしても解雇されないとのコメントをされている方もいました。
もっとも、そのニュース記事の記載は少なく、このニュースをもって痴漢をしても解雇されないとの評価を下してよいのか不明なところがあります。
そこで、本コラムでは、この判決について、他の痴漢を理由とする解雇の有効性が争われた裁判例も紹介しながら分析、痴漢を理由とした解雇の可否・留意すべき点についてご説明をいたします

目次

  1. 前提:懲戒処分は前もって懲戒事由と懲戒手段を定めなければならない
  2. 東京メトロ事件判決の概要
  3. 「痴漢では解雇できない」と一般化することはできない
  4. まとめ(使用者・労働者が注意すべき点)

1 前提:懲戒処分は前もって懲戒事由と懲戒手段を定めなければならない

本件で効力が争われた諭旨解雇や懲戒解雇は懲戒処分の一つとして位置づけられるものです。
懲戒処分は、契約関係における特別の根拠によって(就業規則で定める場合が一般的ですが、雇用契約や雇用契約で定めることも可能とされています)、あらかじめ懲戒事由と懲戒の手段を定めておく必要があるものとされています。
そのため、懲戒処分についてなにも定めていなかった場合、又は処分事由に痴漢に該当するようなものを定めていなかった場合には、たとえそれが犯罪行為に該当するものであっても、懲戒処分を行うことは認められないものとされています。
もっとも、「痴漢を行ったこと」とか、「痴漢行為により処罰されたこと」といったふうに具体的に定めることまでは求められません。
多くの企業では、就業規則に「会社の名誉・信用を毀損したとき」だとか、「法令に違反する行為を行ったとき」といった懲戒事由を定めていますが、このような定めがあれば、痴漢を理由に懲戒処分を行うことは可能であると考えられます。

2 東京メトロ事件判決の概要

(1) 事件の概要

本件で解雇を争った原告は、東京メトロの入社約7年目(解雇当時)の正社員でした。
この社員は、電車内において痴漢行為を及んだものとして、東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(いわゆる「迷惑防止条例」)違反の嫌疑で逮捕され、罰金20万円の略式命令を受け、その判決は確定していました。
そして、会社側は、同社が「痴漢行為の防止について積極的に取り組んでいる中で,鉄道会社の社員が犯した悪質かつ破廉恥な行為であり,被告(※執筆者注:会社)及び被告の社員に対する社会的信用を失墜させ,被告の名誉を著しく損ない,被告の社員としての体面を汚すものであること」を理由をに、この社員を就業規則に定められた諭旨解雇の処分を下しました。

(2) 裁判の展開

裁判において、社員は、痴漢行為は行っていない、罪を自白し、処罰を受け入れたのは早く釈放してもらいたい、裁判で争って無罪となるのは難しいと考えたからであるとの供述をしていたようですが、この無実であるとの供述について裁判所は採用せず、懲戒事由の存在自体はあるものと認めました。
しかしながら、以下の点を考慮して、裁判所は諭旨解雇は相当性を欠き、無効なものであると判断しました
  1. 痴漢の内容や20万円といった処罰内容等を踏まえると、痴漢として処罰対象となる行為としては、「悪質性の比較的低い行為である」こと
  2. 使用者が痴漢行為撲滅を積極的に取り組む鉄道会社であったものの、マスコミの報道等はなく、会社の「企業秩序に対して与えた具体的な悪影響の程度は大きなものではなかった」
  3. 社員が示談の成立を試みたものの、不調に終わったこと
  4. その他の社員の勤務態度に問題はないこと
  5. 当時の会社が、懲戒処分(諭旨解雇)を決定するに際して、痴漢行為を理由に起訴されたかどうかだけを基準としており、社員に弁明の機会が与えず、具体的な事案の検討もしなかったこと

3 「痴漢では解雇できない」と一般化することはできない

確かに、この判決が解雇を無効にしたことは事実です。
しかし、この判決には次に述べるような特徴があり、少なくともこの判決の存在から痴漢をした労働者を解雇することはできないとの一般論を導くことは難しいと考えられます

(1) 普通解雇であれば有効になる余地はある

まず、本件で無効と判断されたのは懲戒処分の一種である諭旨解雇であるという点には留意が必要です。
この場合における諭旨解雇も普通解雇も、合理的理由と解雇を選択することの相当性が必要であることに変わりはありませんが、諭旨解雇の方が普通解雇よりも重大な措置であるため、相当性が認められる(解雇が有効になる)ハードルは高くなるものと考えられます。
したがって、この裁判は、あくまで諭旨解雇の効力を否定した裁判例であり、普通解雇も同様に考えることはできないといえます。

(2) 会社の解雇手続における不備の存在

本件では、会社側の懲戒手続に不備があった点も、留意する必要があります。
すなわち判決では、懲戒処分を決定する手続について、相応の分量をもって検討し、弁明の機会が付与されたとは言えないものと認めて、懲戒手続の相当性に「看過し難い嫌疑が残る」ものと評価しています。
そもそも、痴漢事案に限らず、懲戒処分は、手続的な相当性を欠く場合、些細な手続上の瑕疵でない限り懲戒権の濫用として無効になるものとされています。
そして、一般的に、労働者に対する弁明の機会を付与することは、懲戒手続において重要なものと扱われる傾向にあり、少なくとも些細な手続上の瑕疵とは認められ難いと考えられます。。
手続不備に関する本判決の言及の仕方も踏まえれば、本件における手続の不備は、本判決の結論に大きな影響を与えている可能性があります。
実際、本事件に近接する時期に下された 痴漢行為に及んだ日本銀行の職員に対する諭旨免職処分が争われた裁判では、諭旨免職が有効とされています(東京地裁平成21年1月27日判決)。
この事案は、本件より若干重い処罰がされている点(罰金30万円の略式命令)、新聞報道がされているという点などに違いはありますが、懲戒手続自体は問題なかったものと認定されており、本件と比較して、手続の相当性が結論を左右した可能性があります。

(3) 痴漢の悪質性にも差異がある

そもそも、労働者は使用者から常時支配(指揮監督)を受ける立場ではないため、私生活上の行為(業務とは関連のない行為)を理由とする懲戒処分は、業務中の行為を理由とする場合に比して慎重な制限が課される傾向にあり、犯罪に該当する行為にも同様の傾向があります。
そのため、業務と関連のない犯罪行為を理由に懲戒処分を行う場合は、それがどのような行為であるかという点は、会社側が当然に把握できない事情であることもあって、慎重に確認すべきものと言えます。
そして、痴漢自体が重大な犯罪であることは当然ですが、痴漢の中でも悪質性が「比較的」低いもの・高いものがあるのは事実です。
そのため、悪質性が比較的低いと見られる事案であれば解雇の有効性は厳格に判断されることになります。
本件以前、小田急電鉄の社員が痴漢行為に及んだことを理由に懲戒解雇され、これが有効とされた高裁判決がありました(東京高裁平成15年12月11日判例時報1853号145頁掲載)が、この事案では、問題とされた痴漢行為の前にも同種の痴漢行為に及んでいたこと、(同種前科の存在が考慮されたと考えられますが)問題とされた痴漢行為に対する判決が執行猶予付きの懲役刑というものであったことから、懲戒解雇が相当性を欠くという評価はされませんでした。
もっとも、前に述べた日銀の事案で諭旨免職が有効とされたことに鑑みると、痴漢で刑事処罰がされたケースでは、弁明の機会を付与するなどして手続を尽くしていれば、普通解雇や諭旨解雇が無効となるケースは相当限定されるのではないかと考えられます。

(4) 2014年の事件であること

本件は2014年の解雇が問題となった事案となることにも留意が必要です。
本件当時の東京都の条例では、痴漢行為は6月以下の懲役または50万円以下の罰金とされており、現在(令和3年1月時点)も法定刑に変化はありませんが、神奈川県など一部の自治体ではこれよりも法定刑が重くなるよう改正がされており、東京都でも今後同様の改正が行われる可能性があります
また、このような厳罰化の傾向は、痴漢に対する社会的な非難の程度が年々高まっていることの証左ともいえ、この傾向自体が解雇の有効性を積極づける事情とされる可能性があります。

4 まとめ

以上での検討を踏まえて、労使それぞれは以下の点に気をつけるべきと考えられます。

(1) 使用者側が気を付けるべき点

まず、逮捕や起訴は痴漢を犯したことを意味するものではなく、この事実のみから労働者が痴漢行為を認定することはリスクがあります。
また、痴漢の態様や検挙後の被害賠償等の被害者への対応状況は、労働者以外から情報を得ることは困難です。
そのため、普通解雇をするにせよ、懲戒解雇をするにせよ、社員から事情を聴取し、弁明の機会を付与することは必須であると考えられます。
ヒアリングのみでは労働者側が嘘をつく可能性もあるため、裏付け資料の提出を。不起訴処分であれば、被疑者が請求すれば検察庁は不起訴処分告知書(発行するため、これを提出するよう求めることが考えられます。
また、起訴をされ、判決が下されたのであれば、判決書の謄本を提出することが考えられます(ただし、被害者側のプライバシー配慮の観点から、被害者の氏名等の情報をあらかじめマスキングして渡すように求めた方がよいでしょう)。

(2) 労働者側で考えるべき点

痴漢を犯さないことが第一であることは言うまでもありません。
仮に犯行に及んでしまった場合、被害者への謝罪・賠償状況等も解雇の有効性や判断する際に考慮されるため、被害弁償を行うなどの適切な対応を取ることが重要と考えられます。
もっとも、逮捕直後は気が動転するなどして冷静な判断を下せないものと考えられ、濡れ衣であっても、解雇の回避や釈放のために自白をする方もいらっしゃると思われますが、自白をしてしまった場合に嫌疑不十分による不起訴や無罪を得ることはより難しくなります。
また、自白を覆せる見通しというのも、専門家でなければ分からないところがあります。
そのため、逮捕された場合には、速やかに当番弁護制度や家族の協力によって弁護士に相談し、依頼の機会を確保し、その助言を得て、今後の対応を検討することが肝心です。
なお、不起訴処分告知書や判決処謄本を偽造・変造し、提出することは、会社への義務違反に当たるだけではなく、公文書偽造・変造、行使という犯罪に該当するものでもあるため、決して行わないようにしてください。
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雇止めをされてしまった…更新がゼロ/1回では、雇止めは争えないのか?

近頃は雇用にも色々な形が増え、非正規、有期雇用の労働者の方も年々増えています。そのような有期雇用労働者の中には更新を1回しか受けられなかったり、更新が1回もされないまま契約を切られて(雇止めを受けて)しまう方がいらっしゃいます。

このような場合、雇止めが無効であると争うことはできないのでしょうか。
今回のコラムでは、労働者の立場にたって、更新がされたことがない又は更新が数回程度しかない有期雇用労働者の雇止めについて、どのような場合に争うことができるのかを雇止め規制の仕組みとともに解説します。

目次

1.労働契約法19条による規制

2.更新を期待する合理的理由の判断材料

3.更新がゼロ・1回でも合理的期待が認められたケース

4.雇止めの目的が専ら法律上許されないものである場合、労働者は争える余地がある

5.実態が試用期間である場合も争える余地がある

6.おわりに

 

1.労働契約法19条による規制 

雇止めから労働者を守る(使用者の雇止めを規制する)最も一般的な法規制としては労働契約法19条が挙げられます。

この法律は、次の2つのいずれかに該当する有期雇用について、客観的に合理的な理由がない限り、使用者が雇止めすることを禁じています。
(1)過去に反復して更新されたことがあり、雇止めが無期雇用の解雇と社会通念上同視できる場合(19条1号)
(2)契約期間満了時に更新がされるものと期待することについて合理的な理由がある場合(19条2号)

更新が1回以下の雇用では、(1)場合における「反復して更新された」という要件を満たすことは基本的にありません。
そのため、(2)の場合、すなわち、更新がされるものと期待することへの合理的理由が認められるかが、雇止めを争えるかの鍵となります。

 

2.更新の期待への合理的理由の判断材料 

更新を期待する合理的理由の有無は、最高裁平成3年6月18日第三小法廷判決(進学ゼミナール予備校事件、労判590号6頁掲載)を始めとした過去の裁判例に照らすと、以下に述べるような事情から判断される傾向にあります。

・雇用の臨時性・常用性
・更新の回数
・雇用の通算期間、
・契約期間の管理状況
・雇用継続の期待をもたせる言動・制度の有無
など

このような傾向を見ると、過去更新されたことがあるかは期待の有無を判断する上で重要な事情であることは間違いなく、特に更新がされていないケースの場合は労働者が雇止めを争うことは基本的に難しいものであると言えます。

 

3.更新ゼロ・1回でも期待に合理的理由があるとされたケース 

しかし、労働者にとって争うのが難しいと言っても、以下に紹介するような、更新が1回以下の有期雇用労働者の更新が認められたケースもあります。

(1)更新がゼロ回でも雇止めを違法としたケース(2014年の裁判例)

更新が1回もされたことがないにもかかわらず、労働契約法19条2号の適用を認めた事案としては、福岡高裁平成26年12月12日判決(労判1122号75頁掲載)があります。
この事案は、1年の期間を定められた短大講師に対する初回の更新拒絶が問題となったもので、2年間を通してキャリア教育を実施するキャリア支援科目を新設するなどして、「複数年にわたる一貫した学生の教育が予定され」ており、新規採用教員について1年で契約が終了するとなると、学校運営に重大な支障が生じるとみられること、採用面接時にも更新の限度とされている3年間は、契約は原則として更新されるような説明がされていたこと等を考慮し、更新拒絶を違法なものと判断しています。
この事案は、原告である講師が担当する業務(講義)の特徴に着目して雇止めが否定されたものと考えられ、雇止め効力を争う際には、予定されていた業務の性質(特徴)を具体的に検討することが特に重要であることを示しているものと言えます。

(2)更新1回で雇止めを違法とした事例(2020年の裁判例)

最近でいえば、更新が1回(1年ごとの更新)のみであった有期雇用契約について労働契約法19条2号の適用を認めた、東京地裁令和2年5月22日判決(日の丸交通足立事件、労判1228号54頁掲載)の事案もあります。

この事案は、タクシー会社において、定年(67歳)後も嘱託として雇用を継続した運転手従業員について、定年後の運転手を嘱託として雇用する扱いがされていたこと、会社のタクシー運転手のうち70歳以上の運転手は16%に上っていたこと、定年退職後の嘱託雇用では契約書や同意書の作成がされることなく1回の更新がされたこと等の事情を考慮して、更新継続の期待に合理的な理由があるものと判断されました。原告の嘱託雇用条件であれば2回以上の更新が必要となる70歳以上の運転手が会社のタクシー運転手の相当割合を占めていることは、少なくとも70歳までの雇用継続の期待が高いことを裏付ける事情と言えます。
また、定年退職・嘱託による再雇用と更新の手続において契約書類が作成されないことは、更新手続が形骸化し、更新の可否が十分な審査がされることなく更新されていたことを裏付ける事情と位置付けられます。

このように、定年退職後の再雇用の場面では、似たような立場の労働者の方が過去に多くいるものと考えられ、そのような有期雇用の更新が過去どのように運用されてきたかを検討することも、雇止めの効力を争う際には重要であるものと言えます。

 

4.雇止めの目的が専ら法律上許されないものである場合、労働者は争える余地がある 

これ以外にも、雇止めの目的が法律上許されない違法・不当なものである場合には、労働者側は雇止めを争う余地があります。

一例としては、妊娠・出産が挙げられます。男女雇用機会均等法9条3項は、妊娠や出産等を理由とした女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものと定めており、この「不利益な取扱い」には雇止めも含まれるものとされています。したがって、専ら妊娠や出産が理由としか考えられない雇止めは(例えば、当該女性社員以外に雇止めされた者がいないといった事情は、このような理由を推測させます)、無効となり、労働者には争う余地があります。

他方、使用者からみれば、妊娠や出産等を行った有期雇用社員の雇止めを行う場合、それが理由であると疑われないよう、雇止め対象となる労働者の選定経緯を十分に検討、記録化し、また説明を行う必要があると考えられます。

 

5.実態が試用期間である場合にも争える余地がある 

よく有期雇用と混同される雇用形態として、試用期間が定められた雇用契約というものがありますが、実は、法律上、有期雇用とは別の性質を持つ契約として扱われています。

試用期間付きの雇用契約は、使用者が試用期間に限って雇用契約の解約権を留保した契約とされています。そして、試用期間は、一般的に、(1)従業員の身元調査の補充を行い適格性を判断するためや、(2)期間中の勤務状態を観察して、適格性を判断するための期間とされており、解約権の行使が認められるのも、その契約における試用期間の目的に沿った調査・観察の結果、適格性を欠くものと認められた場合に限られます。言い換えれば、試用期間が満了したからといって自由に正式採用を拒否(解雇)することは法律上認められておらず、その趣旨に反した正式採用拒否は無効になります。

そして、有期雇用契約の中には、最初の期間の定めが試用期間と同様の目的で定められていることがあります。しかしながら、仮に契約書等で有期雇用であると説明されている場合であっても、 最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決(神戸弘陵学園事件、民集44巻4号668頁掲載) によれば、定められた雇用期間の「趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものである」場合は、期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意があるなどの特段の事情が認められる場合を除き、試用期間として扱われることになり、先ほど述べたような、試用期間満了時の解約権行使と同じ規制を受けることになります。
そのため、実態が試用期間付きの雇用である有期雇用は、更新が1回もされていない場合であっても、当該契約における試用期間の目的に照らして適格性がないと認められるような場合でない限りは、更新拒否(本採用拒否)をすることができないということになります。

 

6.おわりに 

以上に見たとおり、更新が1回以下の労働者の雇止めであっても、労働者が争う余地(雇止めが無効となる余地)は残されています。
もっとも、更新の合理的期待の有無、試用期間・有期雇用における期間の定めの判別等で判断材料になる会社側の説明は、口頭ベースのものも多く、言った言わないの争いになることが予想されます。
そこで、労働者・使用者ともに、できる限りやり取りを書面化して、あとの争いに備えておく必要があることをおすすめします。

そして、弁護士に相談していただくことで、自己に有利な証拠の作成・収集ができ、また不利な行動を取ることを防ぐこともできます。そのため、争いになる可能性がある場合には、早急に(例えば、労働者であれば雇止を仄めかされてすぐ、使用者であれば雇止めを検討されているタイミング等)弁護士に相談されることをおすすめします。

→解雇・雇止め問題の相談・依頼を検討されている方は、こちらの説明もご参考ください

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家族が面会できるのはいつ? 逮捕直後の面会の実情、面会が禁止される場合、弁護人ができることまで徹底解説

家族、恋人、仲の良い友人が逮捕されたことを知った場合、ご本人の状況が心配な方、ご本人から話を聞きたい方は大勢いらっしゃるものと思います。

もっとも、逮捕されたお知り合いがいない方の中には、いつになったら面会ができるのか、そういったことすらもわからない方はいらっしゃいます。

また、面会の制限については、捕まっている方によって対応が変わることがあり、逮捕された方との面会のご経験がある方であっても、勝手が異なる場面に出くわすこともあり得ます。

そこで、本コラムでは、逮捕された方との面会ができる時期、面会が禁止される場合、禁止について弁護人ができる活動について、広く解説いたします

目次

  1. 逮捕直後の面会について
  2. 面会が一律に禁止される場合
  3. 接見禁止はいつまで続くのか

1 逮捕直後の面会について 

まず、弁護士等以外の方(ご家族、恋人、友人等)が逮捕直後の被疑者との面会や物の授受を行うことは、禁止されていることが一般です

法律上、勾留(逮捕後72時間以内に請求される、拘束の延長決定手続)をされている被疑者・被告人は法令の範囲内での弁護士等以外の方との面会を行う権利が認められています(刑事訴訟法80条)。

警察などの捜査機関は、この規定を裏返して考え、勾留がされる前の被疑者は、面会を認めるべき者の対象外として扱っています
もっとも、面会は、法令の範囲内で許可することまでを禁止されているわけではないため、例えば少年事件で逮捕直後の被疑者と親の面会を許可するなど、例外的な取扱いをすることもあります。

他方、勾留後であれば、上記の法律のとおり、被疑者は弁護士等以外の者と面会をすることが権利として認められ、収容される施設の規則(受付時間、面会時間の制限、人数の制限等)に従って面会を許可されます。

2 面会が一律に禁止される場合 

もっとも、勾留がされた後であっても、裁判所が、弁護士以外の者との面会や物の授受が一律に禁止することがあります(刑事訴訟法81条)。

このうち、面会を禁止することは「接見禁止」と呼ばれており、2018年時点では被疑者が勾留を許可された場合、37.7%が接見禁止の決定を受けています。

法律上、逃亡や犯罪の証拠の隠滅を図る危険が一定程度に達した場合(法律上は、おそれより狭い表現とされる、これらの行為を「すると疑うに足りる相当な理由」が必要とされ、また勾留が行ってもこれらの行為を防止できないことも求められるものとされています)であることが要件とされています。
そのため、共犯者のいる事件や組織的に行われた事件等では、決定が出されることが多い傾向にあります

接見禁止決定が出された場合、弁護人は、その裁判所の決定に対して撤回を求める不服申立てをすることができます。

勾留に対する不服申立ての場合は結果は勾留の許可・不許可の二択しかないのに対して、接見等禁止決定に対する不服申立ての場合、その結果は二択ではなく、部分的な禁止解除(例:家族等の一部の者への面会のみ禁止対象から外すなど)がありえます
そこで、弁護人としては、ご家族など面会を特に希望する特別な方がいる事件では、その被疑者への接見禁止に理由がないことの一般論に加えて、その方と被疑者との関係、その方と捜査されている事件の関連性といった、面会を希望する方の個別事情を併せて強調し、禁止の全部解除が認められないことに備え、部分的な解除を予備的に求めていくことが考えられます。

3 接見禁止はいつまで続くのか 

通常、被疑者の接見禁止は「公訴提起が至るまで」(起訴されるまで)といった期限が設けられています。

そのため、起訴後、接見禁止が解除される事件が多くあるものの、検察官の請求によって改めて接見禁止決定が下される事件もあります。
このように接見禁止が維持されてしまった場合、起訴前の段階では被疑者・弁護人が請求しないと開かれない勾留理由開示の公判で、起訴後は起訴された裁判の公判くらいでしか、被疑者が家族等と顔を合わせる機会がなく、身体拘束の負担がより強くなってしまいます。

この点、接見禁止の要件である逃亡、証拠隠滅をすると疑うに足りる相当な理由は、捜査や裁判の進展に応じて変化しうるものとされているため、既に不服申立てが棄却された場合であっても、事情の変化後に改めて不服申立てを行った場合、申立てが認められる可能性があります

そこで、接見禁止が継続する場合、弁護人としては、事情の変化に敏感になり、粘り強く不服申立てを続けていくことが肝心であると言えます。

相談・依頼をご希望の方へ

本ページ担当弁護士は、接見禁止決定を争う場合、弁護人の活動により接見禁止決定の解除が得られた場合に、追加で報酬を頂戴することはありません。

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残業時間の証拠がない?どのようなものが証拠として利用できるかを解説

タイムカードもない、労働時間の管理アプリも導入されていない、日報・日誌の類も作成されてないなど、会社が労働者の労働時間や労働内容を全く記録していない職場があります。
このような職場にお勤めの方の中には、証拠がないから残業をしても残業代は請求できないとお悩みになっている方もいらっしゃるでしょう。
本コラムでは、そのような職場で残業時間を証明するには、どのような方法(証拠)が考えられるかを解説いたします

目次

  1. 働いていたことの痕跡を証明する
  2. 働き始める直前・働き終わった直後であることを証明する
  3. 自分で証拠を作っておく
  4. 証拠を収集する方法
  5. 弁護士に相談するメリット

1 働いていたことの痕跡を証明する

まず、働いていたことの痕跡、すなわち「少なくともこれくらいの時間には(これくらいの時間までは)働いていた」と言える証拠がないかを探してみましょう。

例えば、職場から自分用のパソコンを支給されている方の場合、パソコンの起動時刻、シャットダウン時刻のログデータを利用することが考えられます。
自分用のパソコンが支給されているのであれば、基本的には自分以外がパソコンを起動・使用することはないため、起動時刻までには少なくとも出勤していた、シャットダウンの時刻までは少なくとも退勤していなかったといえ、最低限の労働時間を証明できる可能性があります。
また、オフィス内に入るためにセキュリティカードが導入されているような場合、セキュリティカードの使用時刻のデータが警備会社に残されていることがありえ、これを活用することも考えられます。
そのほか、会社内でしか使用できないアカウントから送られていたり、会社内にいることを前提とした内容をもつ仕事関係のメールやアプリのメッセージがある場合、その時間は最低限働いていたといえるため、労働時間を推測させる証拠として利用できる可能性があります。

 

2 働き始める直前・働き終わった直後であることを証明する

さらに、働いていた証拠ではなく、働き始める(出勤)直前・働き終わった(退勤)直後であったことを示す証拠を活用することも考えられます。

例えば、退勤時にご家族へのLIN等で「今から帰る」というメッセージを送る習慣のある方もいらっしゃいますが、このようなメッセージは、退勤時刻を推測させる証拠になると考えられます。
これ以外にも、IC乗車券の履歴を使用して通勤している場合には、その履歴を出勤・退勤時刻を推測させる証拠として活用できる可能性があります。(ただし、遡れる履歴の件数・期間に上限があるため、こまめに保全しておく必要がありますので、ご注意ください。)

3 自分で証拠を作っておく

それでは、このような証拠が全くない場合では、残業代を証明する手段はないのでしょうか。

この場合、自分で作成したメモ・記録を証拠として利用することが考えられます。
もちろん、これらの証拠は労働者側が自由に作成できるため、これまで上げたような労働者以外が作成した証拠、残業代請求と無関係に作成された証拠よりは、証拠としての力が弱いと判断される傾向にあります。

もっとも、日誌のように、労働時間と共に、業務の内容やその日の出来事を具体的に書いておくことにより、事故的に作成することは困難であるとして、その内容が信用されやすくなります。
また、前にご紹介したようなIC乗車券の記録、メールやLINE等が、断片的で労働時間を証明するのに不十分・不足する場合であっても、自身が作成したメモ・記録と一致し、その内容を裏付けることができるようなものである場合、メモの内容を信用させる手助けになると考えられます。

4 証拠を収集する方法

これまでご紹介した証拠の中には、いざ残業代を請求しようという気持ちになっても、収集が困難・不可能になっていることがあり得ます。

例えば、パソコンの起動に関するログ等のデータは、退職後に消去されてしまって収集が困難になることが考えられます。
そのため、在職中に自身で収集して保全を行ったり、退職直前に残業代の請求をすることを告知して使用者がデータを消去しないよう働きかける(あるいはその両方)といった手段を取ることが考えられます。

また、使用者が残業時間の証明を妨害するためにデータを破棄をする可能性が高い場合、裁判所の証拠保全を申立て、裁判所が命令を出すことにより、証拠を収集することができます。

他方、警備会社のセキュリティ記録のように第三者が保存しているデータの場合、残業代請求妨害のために破棄される危険はないものの、労働者の方が使用者の同意なく収集することは困難であると考えられます。
このような証拠については、残業代を依頼した弁護士による照会(弁護士会照会)や裁判提起後の裁判所による照会(調査嘱託)等によって、収集を実現できる可能性があります。

 

5 弁護士に相談することのメリット

ご紹介したように残業時間の証明に活用できる証拠は、職場によって変わり、いろいろなものが考えられます。
労働事件を取り扱う弁護士に相談することは、その職場においてどのような証拠が収集できそうかということを見つけ出す近道になると考えられます。

また、自身でメモを作っておく場合でも、それが裁判所に信用されるような内容にするためには、裁判の経験がある弁護士の助言を得ることが効果的です。

さらに、証拠の中には、証拠保全や弁護士会照会、調査嘱託など弁護士に依頼しなければ、選択することが困難・不可能な手段でしか収集できないものがあることも考えられます。

残業時間の証拠が見つからない・集められないことでお悩みの方は、弁護士に相談することをお勧めいたします。

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