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バイクメッセンジャーは労働者? 委託・請負も労働者になるケース/ならないケースを弁護士が解説

以前コラムでご説明したとおり、労働者であるか否かは、①指揮監督、②報酬の労働対価性の有無・程度をメイン要素として考慮し、これでは判断が難しい場合には③事業者性の有無や④専属性の有無などのサブ要素として考慮して判断するものとされています。

しかし、この判断基準は考慮要素が多岐にわたり、また業種によって労働者性を肯定するに足る指揮監督等の存在は変わるため、どのような内容であれば労働者性が肯定されるのか、されないのかがわかりにくいのも事実です。
そこで、本コラムでは、多くの人が気軽に始めやすい個人事業であるものの、委託元(元請)との力関係が生じやすい自転車やバイクのメッセンジャーについて労働者性が認められるケース・認められないケースを解説いたします。

このコラムは特に以下のような方におすすめ
  • バイク・自転車便事業者で、特定のメッセンジャーへの再委託・下請けを日常的に行っている方で
    ①他業者との契約を禁止している(又は時間などの拘束を厳しく事実上禁止されている)
    ②シフトを一方的に決めて、委託先・下請側が拒否できた事例がない
    ⇒委託・請負関係が雇用契約と認定されるリスクを確認できる

  • 下請・再委託でバイク便・自転車便を行っている方で
    ①いつも依頼を請けていた会社から契約を切られて困っている
    ②仕事中にけがをしており、労災補償を受けられないか確認したい
    ③元請・委託元から基本報酬以上の対応を求められたが、対価をもらえていない
    ⇒元請・委託元との関係を雇用契約であるとして、労基法の保護や労災補償を受けられないか考える材料になる

 

1 労働者性が認められる事例を示した厚労省の通達の発出

自転車やバイクメッセンジャーの労働者性について参考になるものとしては、厚労省労働基準局長が発出した通達(平成19年9月27日基発第0927004号)において示された判断です。

⑴ 通達の内容

この通達は、バイク便事業者との間で「運送請負契約」を締結して運送を行っていたバイシクル(自転車)・バイクメッセンジャーの労働者性について、東京労働局長が厚労省に照会を行って出されたものです。
同通達では、問題となった契約関係について、①から④の事情を以下の通り認定して、メッセンジャーが労働基準法9条の労働者に該当するものとし、その周知を図りました。

①指揮監督ありとした事情
・仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由は、契約上認められているが、実態をみると拒否している例はみられない
・配送業務について手引が定められ、採用後、この手引に基づき行われる座学研修と営業所長に帯同した実地研修を数日間受講
・採用後は、各営業所に配属され、日常、営業所長の指示の下、配送業務に従事している
・日々の配送業務では、出勤時、営業所長から交通安全、接遇マナー等についての諸注意を受けた後、各自の待機場所へ移動し、配送指示があるまで待機。その後、配車センターからの配送指示に従い荷を配送し、次の配送指示があるまで、配送を終えた場所で待機し、以後、業務終了時までこれを繰り返す
・日々の配送指示は、顧客から配送依頼のあった1件の配送品ごとに引取先、引取時刻、届出先及び配送時の注意事項等が指示されている
・バイシクルメッセンジャー等は、携帯電話の保持が義務付けられており、最初の配送指示があるまでの待機場所への到着時、配送指示メーノレ受信後の移動開始時、荷の引取時、配送終了時(配送後の待機開始時)、休憩開始時及び休憩終了時において、携帯メールで配車センターに報告することが求められている
・各営業所では、配送体制確保のため、営業所長が配送量を勘案し、各人の具体的な出勤日・勤務時間についても、本人の希望、配送量等を勘案し、各人ごとに決定
・出勤日には始業時刻までの営業所への出所と業務終了後の営業所への帰所が義務付けられており、欠勤等がある場合は営業所長への連絡が求められている
・バイシクルメッセンジャー等の日々の出勤時刻等の出勤状況は、出勤簿により管理されている
・配送業務については、1件当たりの配送処理時聞が定められている
・契約上、業務の再委託は禁止され、実際にも研修を受けて承認された者しか従事できないため、業務を他の配送員に委託するなど代替性は認められない

②報酬の労務対償性ありとした事情
・報酬は、完全歩合制を採用。月末締切の翌日日支払(口座振込)。
・歩合給は、月ごとの配送料金合計額の50%を基本歩合率とした上で計算されるが、平日にすべて出勤した場合、皆勤加算として基本歩合率に一定の歩合率が加算される一方、あらかじめ定められた出勤日に出勤しない場合には欠勤減算として、あらかじめ定められた出勤時刻に営業所に出所しない場合には遅刻減算として、それぞれ基本歩合率から一定の歩合率が減算

③事業者性に関する事実関係
・業務用無線(必要な場合に限る。)、配送員用バックは会社負担であるが、自転車や自動二輪車のほか、維持に要する燃料代・修理代・税金・車検代、携帯電話等については自己負担
・バイシクルメッセンジャー等の報酬の額は、日額に換算すると1万円から1万5千円程度
・独自の商号の使用は認められておらず、バイク便事業者の企業名が表示されている配送員用バックや荷箱の使用が義務付けられている

④専属性
・他社の業務に従事することは契約上制約されていないが、出勤日・勤務時聞があらかじめ指定され、その聞は拘束されていることから、兼業を行うことは困難

⑵ 通達の効力

法律の解釈は最終的には裁判所に委ねられています。
他方、通達は下級行政機関を拘束する法令解釈の基準とされるもので、裁判所の判断を拘束するものではなく、上記通達に関しても裁判所はそのとおりに判断する義務を負うものではありません。

もっとも、下級行政機関である労働局・労基署を拘束することから、労災等の諸場面で行われる処分はこの通達を前提に下されるものと考えられます。
そのため、事業主としては上記通達を踏まえて労働者と扱うべきか否か、仮に事業者として扱いたいのであればどのような働かせ方をすべきかを整備することが求められてきます。


2 バイクメッセンジャーに労働者性を否定した裁判例(通達発布後のケース)

⑴ 労働者性を否定する裁判例の出現

平成19年通達の事案で考慮された働き方は、バイク運送業者とメッセンジャーとの業務委託・請負関係としてはオーソドックスな内容とみられるところも多いと考えられますが、他方で同通達発付後にこの事案と多くの共通点を持ちながらメッセンジャーに労働者性を認めた裁判例も存在します。
その一つとして本コラムでご紹介するのが、東京高裁平成26年5月21日判決(労判1123号83頁)です。

⑵ 通達の事案との違い

本判決の事案の場合、地裁判例などもみると、上記通達の事案とは以下のような類似点・相違点がありました。

類似点

  • 配送業務手引きと研修により配送業務の手法を指導
  • 配送業務の再委託は禁止
  • 定められた稼働日には申告通り稼働することが想定されていた
  • 携帯電話の保持義務あり
  • 使用する自転車や着衣は、メッセンジャー負担
  • メッセンジャー用の就業規則の整備はなく、懲戒処分の先例もない

相違点

  • メッセンジャーの稼働日・稼働時間はメッセンジャー自らが自由に決定(通達のケースでは稼働日等を会社が決定)
  • メッセンジャーは個別の配送依頼を拒否することが可能(通達のケースでは個々の配送依頼について拒否事例がない)
  • 兼業は禁止されていない(通達のケースでは兼業は契約上禁止されていないが、事実上困難)

⑶ 判決の内容

以上の事情を考慮し、本高裁判決は以下の一審判決(東京地裁平成25年9月26日労判1123号83頁)における判断を維持して、労働者性を否定しました。

「以上によれば、本件業務委託契約書の規定内容は,被告の配送業務の請負に関する約定であると認められるところ,その使用従属性については,メッセンジャーが稼働日・稼働時間を自ら決定することができ,配送依頼を拒否することも妨げられておらず,その自由度は比較的高いこと,被告がメッセンジャーに対し,一定の指示をしていることは認められるが,これらは受託業務の性質によるところが大きく,使用従属関係を肯認する事情として積極的に評価すべきものがあるとはいえないこと,拘束性の程度も強いものとはいえないことを指摘することができ,これをたやすく肯認することはできない。そして,メッセンジャーの報酬の労務対償性についても,労働契約関係に特有なほどにこれがあると認めることは困難である。もとより,メッセンジャーの事業者性が高いとまで評価することができないことは上記説示のとおりであるが,さりとてメッセンジャーの事業者性がないともいえず,また,専属性があるともいえず,むしろ,上記のとおり稼働時間を含めてメッセンジャーが比較的自由にこれを決定し,労働力を処分できたと評価し得ることに照らせば,少なくとも本件契約②締結後の原告らメッセンジャーについて,労基法上の労働者に該当すると評価することは相当ではないというべきである」


なお、同判決は、労基法上の「労働者」(労災補償法上の「労働者」と同じともされています)と労組法上の「労働者」は異なることがありうることを前提に、原告が労組法上の労働者にあたることは認定しています。

⑷ 判決を踏まえた考え方

判決でも「受託業務の性質によるところが大きく、使用従属関係を是認する事情として積極的に評価すべきものであるとはいえない」と述べられているとおり、業務の性質上、請負や委託であっても一定の指揮監督が生じることはありえ、労働者性を認めるに足る指揮監督と言えるかは業務の性質によって水準が異なるものとされています。

他方、一般的に、稼働日・稼働時間の裁量や仕事の諾否の自由は指揮監督の有無、労働者性を判断するうえで重要な事情とされており、本件ではこれらの点が通達の事案と異なったことから、他の指揮監督を積極づける事情を考慮しても、労働者性が否定されるものと判断したように見受けられます。

そのため、どの日・どの時間に勤務するかは一次的にはメッセンジャー側に委ねられ、会社側の仕事を断る自由が保障されているようなケースでは、労働者性が否定される可能性が高くなると考えられます。
もっとも、この場合でも他の事情から労働者性が認められる可能性もありうるため、心配な方は弁護士に相談されることをお勧めします。

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